ジェンダー化する社会―労働とアイデンティティの日独比較史
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著者はこの10年以上、ずっと社会変動と女性の関連について追いかけています。社会的性差、すなわちジェンダーは、社会、歴史、文化などによって構築されるものです。本書はこの性差の構築過程の解明を目指しています。本書を特徴的なものにしているのは、このことをドイツと日本の比較史として取り上げている点にあるでしょう。
日本の文明開化時期では、「ああ野麦峠」にみられるように、繊維工業は女性がその労働力でありましたが、ドイツでは男性の仕事でした。「男の仕事」「女の仕事」という社会の“常識”というものが、どのように成立して行ったかをみることで、ジェンダーの仕組みの一端を知ることになるのではないでしょうか。
繊維工業という、家内工業から工場工業へとダイナミックに移り変わっていった分野には、ジェンダーを解き明かし理解することのできる鉱脈が存在すると言えるように思われます。
本書では、繊維工業の成り立ちから、労働者の保護規定の検討、社会保障制度の成立と、順を追って考察されています。そして、「ジェンダー化する社会」という章において、今日の社会の姿がどういったプロセスを経て辿り着いてきたものなのかということを通じ、著者のジェンダーに対する視野の拡がりに気付かされます。